宮島未奈著『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)を読む。
この本には、「新潮社主催の新人賞で史上初の三冠に輝いた」作品である「ありがとう西武大津店」を含む、計6作品が収められている。
舞台は滋賀県大津市。
主人公は、強烈な個性を持つ「成瀬あかり」。
彼女の周辺の人物が、それぞれの視点で、中2の夏から高3の夏までの「成瀬あかり」を語るという形式で物語はすすんでゆく。
成瀬あかりは、とにかくマイペース。
周囲の目など気にせずに、それが成功するかどうかも気にせずに、やりたいことをやっていく。
彼女の圧倒的な行動力に周囲は影響され、なぜか元気になってゆく。
本の帯には、小説家、マンガ家、芸人やアーティストなど、各界から熱いコメントが寄せられている。
確かに、それも納得の最高の青春小説なのだ。
残りまであと10ページという感動のところで、妻がいろいろと話しかけてきた。
適当に相槌を打ちながら読んでいたが、我慢できなくなり、「お願い、あと少しで終わるから本に集中させて」と頼み、ラストシーンを味わった。
涙を流しつつ、本を閉じた。
本のカバー(イラスト)が、西武大津店をバックにして、埼玉西武ライオンズのユニホームを着た成瀬あかりというのも、ライオンズファンの私としてはうれしいところ。
「私の2023年度のベスト10」候補作品であることは間違いない。
是非、中学生、高校生、大学生、そして人生に疲れ気味の大人たちにも読んで欲しい。
読んで絶対に損はしないし、本当に元気が出るから。
映画化して欲しいし、大学生になった成瀬あかり、社会人になった成瀬あかりも見てみたい。
続編を期待する。